ザリガニ日和



これでサッパリしただろー
その日は何かがガラガラと倒れる音で目が覚めた


リビングに出てみるとザリガニとバッタが遊んでいるらしい


起きて来た俺にザリガニは威嚇のポーズ(?)をとって誇らしげにしている


ふと見ると空のビール瓶がボウリングのピンのようにならんでいた


そこに丸まったザリガニが体当たりをして見せた


空のビール瓶はガラガラと倒れ ソレを見てザリガニがさも自慢げに両手を上げていた


倒れた瓶はバッタが上を浮遊するとひとりでに元の位置に戻った


「お前ら近所迷惑になるから朝からこんなことして遊ぶんじゃねーよ」


そういってもザリガニは誇らしげに手を振るばっかりだった


そこにチャイムの音が響いた「ピンポーン」


玄関を開けると例の少女が立っていた


「あの・・・これ・・・作りすぎちゃったんで良かったら・・・いかがですか・・・///」


手には何か入ったタッパを持っていた


「田中さん・・・だっけ・・・え?俺にくれるの?」


「は・・・はい!」


「なんか悪いねありがたくいただくよ♪」


「あの・・・あの・・・・///」


「ん?どうしたの?」


「何か食べたいものとかありますか///」


「そうだな~ザリガニとか?」


「え・・・ザリガニ?」


後ろで盛大にビール瓶が倒れる音がする


「誰かいるんですか?」


「あぁなんでもないよwありがとう!入れ物は洗って返すね」


そんなやり取りが終わるとリビングに戻りタッパを開けてみた 中身は肉じゃがだった


「ザリガニ食べるか~」


しかしザリガニは興味も持たずにビール瓶倒しに夢中だった


昼食として肉じゃがを頂く事にしたが肉はバッタが勝手に持っていって食べてしまった


それでも凄く美味しい肉じゃが・・・ならぬじゃがだった




「はーどうだったかなーお兄さんのお口にあうかなー///」


「(アンタが一生懸命作ったんだよ自信もちな)」


「うーん肉じゃがって地味だったかなー」


「(大丈夫だってこの子はw男は胃袋捕まれたら落ちるんだって)」


「うーん」


「(でもアンタそんなにイイ男なのかい?)」


「うん・・・///引越しの挨拶の時だってうどん渡しても笑わずに喜んでくれたよ」






「よーし準備ができた ザリガニー出かけるぞー」


呼ばれていそいそとリードを持ってザリガニがやってきた 散歩に行くのが嬉しいらしい


「そうだコイツを忘れていた」そういいながら俺は小脇に寸胴を抱えてザリガニと一緒に銭湯に向かった


入口にある足湯コーナーに寸胴を沈めると脱衣所に向かった


ザリガニは初めてみる広々とした銭湯に興奮して両手をあげていた


「いいかーザリガニーちゃんとお湯に入る前は掛け湯をするんだぞー」


俺は丁寧に脚を一本一本洗ってやりお湯に浸かった


みるみるザリガニは真っ赤になったが気持ち良さそうだ


泳ごうとするザリガニを止めるのには骨が折れた それにタオルを湯船につけようとするので叱った


それから石鹸とブラシでザリガニを磨いてやった ザリガニはくすぐったそうに体をよじり逃げていったが


石鹸で足を滑らせて壁に激突してしまった 


周りのお客さんから笑われてザリガニは少し恥ずかしそうにしていた


そうこうしてると女湯の方が騒がしくなった


「キャーバッタよー」「誰かつかまえてー」


俺は知らないフリをした


その銭湯にはいろいろな湯船があった


薬用のお風呂ややたら高温のお風呂に電気風呂 そしてサウナもあった


ザリガニは電気風呂が気に入ったらしく長いことお風呂に沈んでいた


あんまり長く沈んでるので俺はちょっと気になって


ザリガニをお湯のそこから持ち上げたが案の定のぼせているみたいで


脱衣所に戻ってうちわであおいでやり 牛乳を飲ませた


寸胴の足もポカポカになった事だしザリガニをおんぶして家に帰ることにした



眠りに付くときに俺は気がついた


ザリガニをあのまま放置したら茹でられたかも知れない


惜しい事をしたなと思った