ザリガニ日和



こんな知識どこで仕入れたんだよw


俺はアレから瓶ビールを飲むのをやめ缶で飲むようにしてる


ザリガニのヤツがビール瓶でボーリングの真似事をし始めると熱中してしまい


真夜中でもお構い無しにやってしまうからうるさくて眠れやしない


それに田中さん家に迷惑をかけてしまう


しかし缶ビールに変えたら変えたでまた面倒ごとが増えるだけなのだ


俺は風呂からあがり自分の椅子に座ってイッキに缶ビールを飲み干すと缶専用のゴミ箱目掛けてシュートを放った


「カラン」と小気味いい音を立てた空き缶はゴミ箱の中に吸い込まれていった


「バスケット選手になるべきだったかな?」とちょっとテレながら独り言をいってると


寸胴とフタの隙間から様子を伺っていたザリガニが飛び出してきた


そのまま大急ぎでゴミ箱に向かうと 今しがたシュートされた空き缶をハサミで掴みそのまま寸胴に逃げ込んだ


寸胴の中は結構な量の空き缶がたまってきてる


「オマエ一体なんに使う気なんだよ・・・」


ザリガニは寸胴にフタをして目だけをだして得意そうにこちらを見ている


その目は「早くもう一本カラにしろよ」と訴えかけていた


俺はため息をつき冷蔵庫に行ってもう一本ビールを開けた「プシュッ」


ザリガニの目は期待に輝いていた


俺がわざとビールをチビチビ飲むとザリガニはソワソワし始めて寸胴から片手をだして


もっと早く飲めとせかしてくるのだ


そんなザリガニをよそに机にビールを置きわざとゆっくり頭をタオルで拭いてやるのだ


「ちょっと意地悪かなw」とか思いながら拭き終わり俺がビールに手をのばすと


そこにあるはずのビール缶が無い・・・


ザリガニは机の上のビールを中身などお構い無しにハサミに鋏んで寸胴に逃げようとしていた


「わかったわかった 飲んでやるから返してくれ」


そういうとザリガニは疑心暗鬼にコチラをチラリと見てちょっと考えたあとに俺の元に返しにきた


「なんだ意外に素直じゃないか」ザリガニからビールを取り返すと俺は関心したように言ったが


早く中身をカラにしてくれと終始両手をバタバタしてせかしてくるのだ うっとうしい


「ホラ中身なくなったぞ・・・」といい終わるかいなかのタイミングでザリガニは缶を持ち去っていた


空き缶の何がいいのか良く分からないが俺は結構なスピードで飲んでしまった為


ほろ酔いになったので寝ることにした


「オマエラも早く寝ろよな」


先ほどからバッタは熱心にハンダゴテでラジオに何かを取り付けていたが


コチラをチラリと見ると「チッ」と舌打ちをして作業に戻ってしまった


ザリガニを見ると寸胴の中で空き缶を抱いて寝ているようだった


「ほら もう電気消すぞ」


バッタはシブシブといった感じで寸胴に入っていった


「よしよし・・・じゃーお休み」俺は電気を消して寝室に行きベットに潜った


俺が寝てしまうと待ってましたとばかりに二人は寸胴からコッソリと抜け出し目配せして作業に取り掛かったのだ




次の日は相変わらずの騒音で俺は目が覚めた


なんだかリビングが騒がしいカシャカシャカシャカシャ先ほどからうるさい


「うるせーんだよ!なにやってんだよ」


寝室から出てきた俺を迎えたのはビールの空き缶で作った「缶ぽっくり」を履いて歩行しているザリガニだった


ちなみに「ぽっくり」とは空き缶にヒモを通して手で持ち 缶に乗って歩行する遊びだ


ザリガニは4対の足に缶ぽっくりを装着しそれぞれの缶から伸びている紐を両手に装着している


「オマエラ・・・・昭和生まれの人しか分からないような事するんじゃねーよ!」


俺は悪態をついたが当のザリガニはそりゃもう得意げに歩き回っているカシャカシャカシャカシャ


どんくさいと思っていたザリガニだったが意外に上手に歩けているようだ


ザリガニは俺が起きて来た事を良い事にリードを持って外につれてけとうるさくわめき始めた


「わかった わかったよ まぁ今日は隣町の本屋に行く予定だったから つれてってやるよ」


ザリガニはとても嬉しそうに自分でリードを巻いて「ぽっくり」を装着していた


その奥でバッタがニヤニヤと笑っていた




いつもの散歩ルートを「缶ぽっくりザリガニ」が闊歩するといつも散歩でであう犬はいつも以上に驚き


道の端をいそいそと走りぬけていった


「これはこれでなかなかいいな♪」


もちろんザリガニもぽっくりのヒモを高々と両手にもち得意げに歩いている


すれ違う人もものめずらしそうにザリガニを眺めていたがザリガニもまんざらでないような表情で


うれしそうだった


途中道ですれ違った見知らぬおばあちゃんに「上手に乗れてるね~この子は~」感心され


ザリガニは頭をなでられ そして俺達に飴をくれるのだ


二人は飴を舐めながら散歩のルートから外れ隣町の本屋に向かう道をすすんだ


だいぶ進んでいくと向こうから大きな犬の散歩をしている人が歩いてきた


「おい・・・ザリガニ・・・あの犬に威嚇するのは止めておこう・・・敵がでかすぎる」


ザリガニも犬に気がつくと少し震えているように感じた・・・・のに・・・


事もあろうに今まで以上に高く両手を掲げ犬に威嚇し始めた


「このバカやめろよ!どうなってもしらねーぞ!?」


だが威嚇された犬は意外に気が弱いのかシッポと耳がたれ「クーンクーン」と逃げていった


それはまぁいい・・・それでよかった 問題はザリガニだった


突然缶ぽっくりから火が吹き出ると空高く「缶ぽっくりザリガニ」は飛んでいってしまったのだ


「おおーい!ザリガニーどこ行くんだよーー!本屋はそっちじゃねーぞーーーーー!」


余りのことに俺はリードを離してしまいザリガニは目的地である本屋とは違う方向に飛んでいってしまった


飛んでいくザリガニも思惑と違うぽっくりの動きに戸惑っているように見えた


どうやらヒモを思いっきり引っ張ると火が付いて飛べるよう出来ているみたいだった